超能力が欲しいと願い続けて幾星霜
だって超能力、欲しくない?
誰だってもしもこんな力があったらって妄想、一度くらいはするものでしょう。
とは言え、どんな能力が欲しいのかってところは人によりけり千差万別なわけだけど。
例えば空を飛ぶ能力も、某龍の球を集める漫画の舞空術のようにその身一つで空を駆けるのか。または天使よろしく背中に翼を生やして大空を羽ばたきたいのか。
ちなみに俺は翼に憧れる舞空術派です。
翼には憧れるの。背中の大きな銀色の翼を広げて、風に包まれながら飛翔する。なんて妄想を何度した事か…。
しかし残念ながら、その妄想はいっつも上手く飛べずに墜落して終わる。
翼を上手に扱えない、風に乗って滑空したり、空中で姿勢を保つのがめちゃくちゃ難しい、何より羽ばたくのめっちゃ疲れる。そりゃもう、3kmくらい走れって言われた方が楽なんじゃないかってくらい疲れる。
そんなわけで、大空を羽ばたくことはできないので、どうせ空飛ぶなら翼は無い方がいいかなぁ、とか。
あとオーソドックスな超能力と言えば、やっぱり念動力(サイコキネシス)かな。
いいよね、サイコキネシス。万能感で言えばトップクラスだし、だからこそ多くの人が憧れるような気がする。
そしてこれも、妄想するにはコツがいる。
だってほら、なんせ持ってないですから、サイコキネシス。
念じたら瓶の蓋が開くとか、離れたところにある物を引き寄せるとか、あるいは悪人を吹っ飛ばすとか、とかとかとか、色々考えるわけだけど。
これ、どうやって動かしてんの?
そういうの、手でしかやったことないじゃない。いや悪人吹っ飛ばした事はないけども。
だからどうにも、手でやる時の感覚とか力加減とかで考えてしまって、これはつまり念動力ではなく見えない伸縮自在の腕がもう一本あるようなものでは…と、気付いた瞬間エルフェンリート。
なんか違う。俺の思ってるサイコキネシストはもっとスマートでクールでスタイリッシュでミステリアスでアンビリーバボーな超能力者である。
なんか、こう、見えない腕がもう一本あるって、野暮ったくない?
何とも言えないコレジャナイ感すごくない?
だからきっと俺には念動力は使えないのだ。
そして大本命、精神感応(テレパシー)能力。
相手と声を出さずに会話をしたり、思考を読み取ったりできる人。
いい。これはいい。
妄想に失敗が少ない。とてもスムーズにイメージし、生まれた時から当たり前に扱える能力であるかのように妄想が広がっていく。
もちろん妄想の中で失敗する事もある。
見たくなかった、見ちゃいけなかった相手の脳内とか、あるいは見せたくなかった心の内が通じてしまうとか。
でもそんなの、テレパシストでなくてもあり得る事だから無問題(もーまんたい)!
さらに妄想を広げて、人でなく動物や植物の声を聞けるってのは?会話ができるってのは?
ここでぶつかる最初の問題は、「言語が違うのに通じるのか?」なわけだけど。要は頭の中覗いたって犬語猫語でしか聞こえなかったら意味ねーじゃんってところ。
ふふん、そこは抜かりなく。
精神感応、なので。
言葉を聞き取るだけでなく、そこに込められた感情や意志を読み取る能力なので。
それを必要に応じて脳が自分の理解できる言語に変換する能力なのだとすれば、言葉の壁は無くなるので。
意志あるもの、命あるものならば能力の対象だとすれば、こんな素晴らしい能力は無いのでは!?
飼い犬と仲良くお喋り!なんて!妄想が捗ってしまうじゃない!!
と言うか、こんなにスルスル妄想できてしまうテレパシーこそ、俺に最も向いている能力ではなかろうか。
ほら、パーソナルリアリティーの扉を開けそうじゃん。
でもやり過ぎると能力開花前に精神科通院が待ってる気がするから、やっぱり妄想は妄想なんだけどね。
俺が楓麿と会話する日は遠い……でもなんとなく考えてる事はわかる気がするから、テレパスなんか無くてもいいかもしれないけど。